「誘うのは自由だろ?」

余裕のある表情。

「どういう関係なのかは知らないけど、誰と行くかを決めるのはカホで……キミじゃないはずだ」

挑発するような口ぶりだった。

言われたユノは、案の定、ムッとした顔つきになる。

「けど……」

「けどじゃない。もう一度、言おうか?」

先輩はユノの声をさえぎると、顔を近づけて……。

「キミが決めていいことじゃないんだよ」

小馬鹿にするような口ぶりで繰り返す。

その表情は、バスケの観客席で見かけたものと同じだった。

「っ……」

言葉を詰まらせて、歯を食いしばるユノ。

わたしとしずちゃんは顔を見合わせて、迷いながらもそばへ行こうとする。

けれど、その前に……。

「醜いね……束縛は自信のなさの表れだ。太ると心まで狭くなるんだね」

先輩はため息まじりにそう言って、ユノが持ったままのカードを指先で弾く。

「そ……そんな言い方やめてください! ユノの体型は遺伝なんです!」
聞いていられなくて、思わず口を挟んだ。

でも、先輩はひるむことなく、

「遺伝? それはどうだろう……僕には自分を甘やかしている体にしか見えないけど?」

と返してきた。

「我慢ができなくて、食べたいから食べる。痩せるのは難しいから中身で勝負する。……そういう甘ったれた考えをごまかすために“遺伝”という言葉を使っているんじゃないの?」

涼しい顔で、次から次へと傷つく言葉を並べてくる。

「……っ」

一点を見つめたままのユノの顔が、どんどん赤く染まってく。

すごく悔しそうで……。

「お兄さま、もうそれくらいにして」

静まり返った空気の中でぽつりとつぶやくのはツインテール。

声を挟んできた彼女は、胸ポケットからペンを出して、先輩の顔に突きつけた。

ホッとしたわたしはしずちゃんと目を合わせて、次の言葉を待つ。

少しだけ見直したの。変な呪文ばかり唱えて、ムカつくときもあるけれど、こういうときはまともな人なんだなぁって。

そう思っていたんだけど、