あ……このままじゃ、また……。

昨日のふたりを思い出す。このままじゃまたピリピリした空気になって、流れも余計にややこしくなるような気がした。

だから、ユノの機嫌をなおすために、急いでそばへと行こうとしたの。

そんなわたしの耳に届いたのは……。

「ひかる……?」

先輩のキョトンとした声だった。

名前をつぶやかれたツインテールは、ゆっくりと視線をユノから先輩へと移し、真顔になる。

「……そこにいるのは、生きているだけで恥ずかしいわたしのお兄さま?」

可愛らしくそう言って、ユノのそばを離れるツインテール。

「ハッ。やっぱりそうか……精神年齢が5歳で止まった妹よ、学校で会うなんて珍しいな」

先輩も近づく彼女にニコッと微笑む。

まだ校舎の出口にいるユノは、親し気なふたりの様子に驚いているみたい。

それを見て、一緒に歩いていたしずちゃんはたずねてくる。「ユノくんは知らないの?」と。

うんとうなずくわたしは、

「このふたりは兄妹なの」

ぽかんと立ち尽くすユノにふたりの間柄を教えた。

「ええ!」と声を漏らすユノ。わたしとしずちゃんはユノの視線をたどるようにして、まだ会話しているふたりに目を向ける。

「はぁ。お兄さまの顔を見ていると頭痛が……」

「ハッ。頭が痛いのは今に始まったことじゃないだろう?」

この兄妹、どうやら仲が悪いらしい……。

穏やかに話してはいるけれど、言葉には皮肉が混ざっている。