「ん? 何これ……」
突然、ひらひら、ひらひら、と赤いものが空から降ってきた。
それをうまくキャッチしたしずちゃんは、
「バラの花びら?」
鼻先に近づけて匂いを嗅いでいる。
「なんでこんなものが……」
どこから落ちてきたんだろう。そう思いながら上を見ると、
「やべ!」
校舎2階の窓辺には数名の男の子が顔を覗かせていたようで……。
わたしたちが上を向くと同時に、彼らはスッと姿を隠す。
「何、今の……」
「……さぁ」
立ち止まって、それからも様子をうかがっていたんだけれど、その間に彼はそばにきていたんだろう。
視線を戻すと、目の前にはキラオ先輩が。
校舎にもたれかかる彼は、顔の前で両手を交差して、その指と指の隙間からわたしを見つめている。ビジュアルバンドのミュージックビデオでもやってそうなポーズだった。
「果歩……わたし、先に行っとくね」
「や、ちょっと待って! ひとりにしないで!!」
関わりたくないと言うかのように、しずちゃんはわたしを放っていこうとする。
慌てて腕を掴み、そばから離れないでと頼んでいたら……。
「やぁ」
っ!! やっぱり話しかけてきた!!
萎縮しながらそうっと振り返ると、先輩は顔をおおっていた手を優雅に広げる。
そして、天に向かって指をぱちんと鳴らした。
すると、2階の窓のほうから話し声が聞こえ、しばらくしてから再び、花びらがひらひらと落ちてくる。
「気にしないで。これはただの演出だから」
窓辺に目を向けるわたしにそう囁いて、一歩一歩と近づいてくる先輩。
「あんた、ホント面倒くさい人に好かれたね」
ため息まじりにつぶやかれる。