「うん。大規模だから警備員も沢山いるらしいし、確か……この日の大通りは車も通れなかったはずだよ」

「そんなに人が集まるの?」

昨年、ニュースで話題にはなっていたけれど、そこまで大きな催しだとは思っていなかった。

「面白そうだけど、コスプレって少し勇気がいるよね」

「オレ、こういうの無理だわ。仮装の何が楽しいのかわかんねぇし、人ごみだろ」

「そういや、鮎川は人ごみが苦手だったね」

「すっげー嫌い。普通に歩けねーのがイライラする」

しずちゃんと鮎川が話す中、チラシをもう一度眺めていた。

すると、それまで静かだったユノが突然、身を乗り出してくる。

「行こう!! 果歩ちゃん!!」

「ユ……ユノ?」

ええ、何……なんで目が血走ってるの……。

「オレ、ずっと参加したかったんだ!! 日本のハロウィンはすごいから!!」

ユノはそこから力説しはじめた。

アメリカでも日本のハロウィンイベントの様子がニュースで流れていたらしい。どうやら、日本の過ごし方が向こうと少し違っているようで……。

「オレたちは毎年、かぼちゃでジャック・オー・ランタンを作ったり、オバケのコスチュームでトリックオアトリートをしてた」

「トリックオアトリート? 言葉は聞いたことがあるけど……」

「“お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ”って意味だよ。大人からお菓子をもらうんだ」

「へぇ……」

「それはそれで楽しいんだけど、日本のハロウィンはすごい! アニメや映画のキャラクターになってパレード! コスチュームの質も一段上だし、アメリカよりもハロウィンを楽しんでるよ!」

「そ、そうなの……?」

「オレ、日本でハロウィンイベントに参加するのが夢だったんだ!」

ユノの声がどんどん大きくなる。