そんな流れで、放課後はユノと下校することになった。

「あのさぁ……果歩」

「ん?」

「……わたし、ここにいなくてもいいと思うんだけど」

「ううん。いたほうがいいの」

ふたりだと気まずいから、しずちゃんも誘った。

今日は特進クラスも同じ時間に終わる日だから、彼氏さんと帰るつもりだった彼女は、ずっと不満げな表情を浮かべている。

「今日は一緒にいてほしいの。……ユノ、怒ってるみたいだし」

「あれのどこが怒ってるわけ?」

しずちゃんが指差す先で、ユノと鮎川は楽しそうに肩を並べて歩いていた。

「今は普通に見えるけど……ホントに怖かったんだよ」

“一緒に帰ろう”と言われたとき、どんな表情だったかはわからないけれど、声が真剣なものだった。まだ怒ってるんだ、と思ったの。

いつものように笑顔で誘われていたのなら、わたしだって“しずちゃんと鮎川も誘おう”なんて提案しなかったよ。

「ま、面白い話を聞けたからいいけど」

渡り廊下での出来事を話した後から、しずちゃんはずっと口元を緩めている。

「……そんなに面白いかな?」

キラオ先輩はたしかに実物もかっこよかった。
でも、中身は最低だよ。

「んー……聞いているほうは面白いけど。でもまぁ、あの人に目をつけられた果歩は、これから面倒くさいことに巻き込まれるかもね」

「え……?」

意味深な言葉。思わず立ち止まり、首を傾げてしまう。

ちょうどそのとき、前を歩くユノがタッタッタッとこっちへ駆け寄っていたようで。

「果歩ちゃん! これ行こうよ!」

そばにきた彼は、スッとポケットティッシュを見せてきた。

「ん?」

「今さっき、そこのお兄さんからもらったんだ」

ユノの視線をたどると、顔にピアスをつけたパンク系のお兄さんが、駅前を行き来する人たちに同じものを配っている。

「“ハロウィン……パーティー”?」

袋の中のチラシに目を向けた。

かぼちゃのオバケのイラストが大きく描かれていて、その口の中に開催日時が書かれてある。

「ほら、アレだよ。隣の区で毎年やってるイベント。パレードがあってテレビでも放送されてるだろ」

「ああ、あれかぁ!」

後から来た鮎川の言葉で、これがなんのチラシなのかがわかった。

「県外からも人が集まってくるんだよね」

「へぇ、そうなんだ? しずちゃん詳しいんだね!」

彼女にもポケットティッシュを見せる。