「ユノ!! もっと頑張って!!」

あんなヤツらにもう笑われたくない。

ユノは太っていても……。

「っ!」

声に気づいたユノが目を合わせてきた。

汗だくの彼は、立ち止まって息を整える。

そして、いつものように……優しい表情を見せてきた。

「派手な応援。……おかえり」

「ただいま!」

自分の席へ戻ると、しずちゃんの彼氏さんはもういなくなっていた。

前のめりになって見守る試合。

点を離されてもユノたち5人は最後まで諦めず、必死にボールを追いかけていた。

そして……。

試合終了後、わたしは中庭の水飲み場にいたユノに駆け寄って、ハンドタオルを渡す。

「ごめんね、果歩ちゃん。……せっかく応援してくれたのに」

彼は「大丈夫」と言ってタオルを受け取らず、汗ばんだ腕で口元をごしごし拭く。

「相手チーム、バスケ部が3人いたんだって」

「え、そうなの?」

「うん。しずちゃんが言ってた」

わたしが席を外しているとき、彼氏さんが褒めていたらしい。

バスケ部を相手にあそこまで点をとれるのはすごいことだよ、って。

「なんだ……どうりで。この人たちうますぎる、と思ってたんだよね……」

ユノはハァッとため息をついてから、情けなさそうな表情で口を開く。

「嬉しかったよ……応援」

「……!?」

あれ……今の顔……。

「ありがとね、果歩ちゃん」

「あ、う……うん……」

一瞬……なんか、かっこよくなかった……?

「はぁ~、運動したらお腹すいたなぁ~。もうお昼、食べちゃおっかなぁ……」

「……まだ10時半だよ?」

気のせい、かな?

「じゃ、半分だけ」

「……」

あ、やっぱ気のせいだ。

にっこり笑った顔の二重あごを見て、少しだけホッとする。

「そういえば……松本さんは?」

「ああ、しずちゃんは今、彼氏の応援だね」

「そっか。じゃあ、一緒に食べない?」

「……わたしはジュースだけにしとく」

水飲み場から校舎へと歩くわたしたち。

ツインテールが現れてからユノにイライラすることが増えていたけれど、今はなんだか、一緒にいると楽しくて……。

食いしん坊な話にも自然と笑みがこぼれた。

でも、その穏やかな時間は長く続かないようで……。