トーナメント式で行われる試合。

開始を知らせる放送が流れると、まもなくしてベンチにいたユノたちもコートに出てくる。

「1回戦の相手は2年か……」

「うん。女子のほうは3年と当たるらしいよ」

「うえー。マジ?」
ジャージの色が別だから、観ている側からすればわかりやすくて助かるけれど……。

相手チームはみんな背が高い人ばかりで、ちょっと強そう。

「にしても……ユノくん、嬉しそうだね~」

「……」

なんだか参観日の母親になったような気分。整列しながらも、ユノはちらちらこっちを見て、目が合うと手を振ってくる。

そんな調子で大丈夫かなと心配だった。でも、どうやら、それは考えすぎだったみたい……。

「うわっ」

「かっこいいじゃん!! ユノくん!!」

開始してまだ1分ちょっとしか経っていないのに、シュートを決めたユノ。

ジャンプして着地すると、体育館全体の床がズシッときしむ。

その音は相手に威圧感を与えるものになっていた。

「……すごい」

相手チームのふたりに囲まれても、ひるむことなくドリブルでかわし……。

チームワークもいいせいか、ウチのクラスはあっという間に8点もリード。

「すごいね、雫ちゃんのクラス」

「せ、先輩!!」

突然、背後から声がして、振り向くとそこにはやまぶき色のジャージを着た男の子が立っていた。
「あ……はじめまして! 果歩です!」

「はじめまして。話すのは初めてだけど、果歩ちゃんのことはよく聞いてるよ」

しずちゃんの彼氏さんだった。

すらりとした体型に、たれ目の優しそうな顔。

「先輩のクラスももうすぐだね。雫、楽しみ!」

「ありがと。雫ちゃんが観てるなら頑張らなきゃなぁ」

しずちゃん……その声、どこから出してるの?

自分のことを名前で呼ぶようなタイプでもないのに。……顔つきももう別人だ。

でも、なんだか可愛くて……見ていると、こっちまで嬉しくなる。

「わたし、ちょっとトイレ行ってくるね」

「いってらっしゃーい!」

せっかくだから、少しだけふたりにしてあげよう。

そう思って席を離れたんだけど……。

「なんだ、アレ」