そう考えていたけれど、しずちゃんは時間になると真っ先に体育館へ向かう。
応援をしたくないわたしは、2階の観客席に腰掛けた彼女に眉を寄せた。
「なんでバスケの応援なの?」
「ん? 先輩が10時半スタートの試合に出るから。ウチのクラスも9時半からだし、ちょうどいいかなって」
「……」
「嫌なら、他の応援に行ってきなよ」
気持ちいいくらい切り捨てられる。
ホント、最近のしずちゃんは恋愛一色だな。
「……他に行くとこないし、もうここでいいよ」
ひとりでいてもつまらないし、仕方なく、隣に腰をおろした。
体育館ではふたつのコートが用意されていて、1回戦に出場するメンバーがもうベンチに集まっている。
「あ、ユノくんこっちに気づいたみたいよ」
「……知らない」
しずちゃんが指差す方向では、うちのクラスのメンバーが準備運動をしていた。
フンッと顔を背けたあとこっそり横目で確認すると、ユノは嬉しそうに手を振っている。
「言わなくてももうわかってると思うけど。ユノくんの“応援してほしい相手”は果歩なんだよ?」
いいの? 手を振らなくて。そう言葉を付け足して、しずちゃんはスマホを触り始めた。
再び、1階を見ると、ユノはわたしに気づいてもらおうとジャンプまでしている。
「……もう」
ぎこちなくも片手を上げてひらひら振ってみると、ユノは体の動きをぴたりと止めた。
ん、と変に思っていたら、
「がーんーばーるーねー!!」
今度は派手に両腕を振って、大声で叫んでくる。
「っ……振るんじゃなかった」
「可愛いじゃん、ユノくん」
クククッと喉を鳴らして笑うしずちゃん。
わたしは赤面して、周りの目ばかり気にしていた。