「ユノもこの電車?」

「うん。一緒に行こうと思って!」


……やっぱり。待たれていたような気はしてた。


改めて見る、満面の笑みを浮かべた彼の体つき。

あの頃は華奢だと思うくらい細かったのに。


「あとこれを……」

「あ、ユノ、電車がきたみたい」


カバンの中をゴソゴソする彼に声をかけ、乗り込もうとする人たちの後に続く。

車内はさっき見た電車よりは空いていた。


「座れないね」


ドア際に立って車内を見回す。

スマホを触るサラリーマンを目にして、自分も同じようにとポケットに手を入れた。

けれどそのとき、


「っ!」


突然、大きな手が首元に迫ってきた。

びっくりしてのけぞると、


「……伸びたね」


ユノは指先で拾ったわたしの髪を愛おしそうに見る。


「似合ってるよ、この髪型も」


優しい声で囁かれたけれど、わたしの意識は髪を触る手よりもその腕の太さに向いていた。

だから、


「あ、ありがと」


返事もぎこちないものになってしまう。


……複雑だった。

言われて嫌な気はしなかったけれど、嬉しいとも思わない。

多分、今のわたしは「ありがとう」っていう顔をしてないはず。


ユノの手が離れても居心地は悪いまま。

だから、これ以上の会話を避けてドアの外を見た。

景色は踏切待ちの車や自転車から薄暗い駅のホームへと変化し、車内では車掌さんのアナウンスが流れる。

停車してから開いたのは向こう側のドア。

何人くらいが乗ってくるのか気になって、ユノの後ろ側の様子を見ようとした。

でも、ちょうどそのとき