「あー!」
きょとんとするユノを見つめていたら、突然、乗田ひかるが間に割り込んできた。
「湯前くんの好きな女の子って……この子?」
目と鼻の先でぴょんぴょん跳ねるツインテールの髪。
彼女はわたしに背を向けて、ユノだけに話しかけている。
「……は、はい。その子です」
って、なんで正直に答えるの……周りにはみんなもいるのに。
全てにイライラしてしまう。
気持ちを抑えようと、深く息をついていたら……。
「ん~」
乗田ひかるは振り返ってジロジロとわたしを眺めてくる。
「……な、なんですか」
「ん~」
彼女は自分の頬を人差し指で押して、考えるような態度をとった。
「……?」
一直線に切りそろえた前髪と、クリクリした大きな瞳。
お兄さんもかっこいいけれど、この人もやっぱり可愛いな……。
間近で見つめられ、わたしは硬直しながらも相手の可愛さに見とれていた。
すると、彼女はパッと笑顔になり、手のひらを合わせる。
「そっか! 湯前くんは中身で好きになったんだね!」
……は?
「見た目もカバーできるくらいの性格なの?」
「はい! 果歩ちゃんはいい子ですよ!」
いやいやいや、ユノ?
そこは「はい」じゃないでしょ……。
「ピカルン、ビックリしちゃった! フツーすぎるくらいフツーの女の子だったから!」
「いや、果歩ちゃんは見た目も可愛いですよ?」
「うんうん、わかるわかる! 好きになったらなんでもよく見えちゃうんだよね!」
「はい!」
だからさ、ユノ? なんでそこで「はい」なの……。
「なんか……もう、ほんとイラつく」
「まぁまぁ。向こうに悪気はないみたいだし」
イライラしてユノたちから離れたわたし。
しずちゃんは苦笑いで背中を撫でてくる。
「もう知らない。ユノの応援なんか絶対にしない!」
「またそんなことを言って……」
呆れた顔をするしずちゃんに、ツンとした態度をとる。
「だって……」
おまじないをしてもらったから活躍するんでしょ?
なら、わたしが応援する必要なんてないじゃん……。