“あー、言われてみれば……似てるかも、あのふたり”
“うん……果歩ちゃん、ユノっちのことが気になるのかもしれないけど、できれば関わらないほうがいいよ! 乗田ひかるを敵に回せばこの人が出てくるかもしれないし、わたしたち普通科は特進と仲が悪いじゃん? 厄介なことになるかもしれない!”
“なるほど。それで教えてくれたんだね! ありがと、マミちゃん”
どうやら、このキラオ先輩という人は評判がよくないらしい。
でも、この写真からは悪い人だというイメージは伝わってこない。
“ユノも細かったらこんな感じなのかなぁ?”と考えながら、その時間はずっと写真を眺めていた。
フェンス越しに相撲部を見るのをやめ、また駅まで歩き出す。
「そういえば、しずちゃんはどこでそのキラオ先輩を知ったの?」
毎日、ほぼ同じ行動をとっていたはずなのに、なぜ彼女だけが知っているのだろう。
気になってたずねると、しずちゃんはさらりと答える。
「彼氏と同クラだから」
……え?
「“彼氏”って……連絡とりあっていた先輩のこと?」
「うん」
「いつから付き合ってるの?」
「花火の日から」
……。
付き合うと決めたときに報告する、と言ってたくせに。
しずちゃんは、自分のことをペラペラ話すタイプではないんだな。
「彼氏は特進の人?」
「うん。でも一般クラスをバカにするような人じゃないよ? ああいうヤツらは特進の中でもほんの一部だから」
その言葉で、クラスメイトたちの怒っている顔が頭に浮かんだ。
「そういや……今日もモメたらしいね、特進と。さっき教室で男子たちが怒ってた」
「ウチのクラスだけじゃないよ、特進とモメてるのは」
この学校にある“特別進学科”は国立などの難関大学を目指すクラスで、入部できるクラブ活動も文化系以外は禁止されていて、毎日、わたしたちより1時間多く勉強をしているの。
頭がいい人たちが集まっているんだけど、どうやら性格が悪い人も多いみたいで、わたしたち普通科をよくバカにするらしいんだ。
「そういえば、しずちゃんも先生から特進をすすめられたんだよね? 受験のとき」
「すすめられたけど、特進に入ったら遊べないじゃん」
「まぁ、たしかに……今のこの瞬間も特進の人たちは勉強中だもんねぇ」
「そうだよ。彼氏が特進だから今もわたしは果歩と帰ってるの」
「……」
ばっさりとわたしを切り捨てる言葉。
「ふうん。じゃあさ、今度、しずちゃんが特進へ行くとき、わたしも連れてってよ!」
「なんで?」
「見てみたいじゃん。キラオ先輩!」
「……あんた、ユノくんのことが気になってるんじゃないの?」
「そ、それとこれとは別! イケメンは目の保養なの!」
あんなビジュアルの人が同じ高校にいるってだけでも感動してしまう。
好きとかそういう感情じゃなくて、ただたんにイケメンを見てキャアキャア言いたいんだよね。