「果歩ちゃんは何にしたの?」

「まだ書きに行ってないよ。ユノは?」

「オレ? オレはサッカーとバスケと柔道にする」

「3つも!?」

誘われたものを全部やろうとしている彼。

驚きつつも“らしいな”と思っていたら、ユノは緊張した面持ちで「あのさ」と続けてきた。

「ん?」と首を傾げると、彼は身を乗り出してくる。

「応援してほしいんだ!」

言うと同時に、ユノは頬を赤く染めた。

まっすぐな瞳を見て、わたしは瞬時に花火大会で見つめ合ったことを思い出す。

「……だめ、かな?」

「えっ……や、別に」

ダメじゃないけど、ちょっと照れる。

「果歩ちゃんが観に来てくれたら、オレ……倍以上の力が出せると思う!」

「……」

「応援してくれない!?」

すがるような言葉と、力んだ声。

ユノはいつも“好き”って気持ちをそのままぶつけてくる。
「わかった……行く」

そこまで言われたら、断れないよ。

「ホントに!?」

「……うん」

無邪気に笑って、ガッツポーズで喜ぶ。

そんなユノをじっと見つめていたら、

「いい感じですなぁ、ご両人!」

突然、マミちゃんが間に割り込んできた。

「えっ、別にいい感じとかじゃ……」

ニヤッと笑われて、一気に恥ずかしくなる。

日焼けして真っ黒な肌になった彼女は、ユノに向かって教室の後ろのドアを指で差す。

「先輩が呼んでるよ~」

「え? あっ……ありがとう」

ユノは彼女に言われるまま、そばを離れてく。

マミちゃんとふたりでその背中を眺めていたわたしは、

「あ……」

廊下からユノに手を振る女の子を見て、口をぽかんと開けた。

「あの人、先輩なの?」

朝のツインテールだ。

「うん。胸ポケットの校章は水色だったから2年生」

「……へぇ」

1年は赤色、2年は水色、3年はやまぶき色。ウチの学校は、校章や体操着の色を学年ごとで分けている。

ユノを呼んでくるように頼まれたマミちゃんは、すかさず、相手の色をチェックしたのだろう。

「ってうか……授業中なのに」

「今はどのクラスも自習らしいよ」

「……ふうん」

何を話してるんだろう。

ドア際のふたりが気になって、目が離せない。

「うわ……朝の人じゃん」

わたしたちの視線をたどりながら歩いてきたのだろう。

戻ってきたしずちゃんは怪訝な表情をする。