「あー! ママ、あの人おっきい! おすもーさんみたい!」
……え?
ユノの口は動いているのに、耳に届いたのは子供の声。
ぽかんとして辺りを見回すと、少し離れた場所で、小学生くらいの男の子がこっちを指で差していた。
どうやら、ユノの声はこの子にさえぎられたらしい。
「コ、コラ! 失礼でしょ。やめなさい!」
「す、すみません!」
男の子のご両親が慌てて頭を下げてくる。
「あっ……大丈夫ですよ」
同じようにあ然としていたユノは、慌てて愛想よく返事をした。
隣でわたしは、ふうと小さく息をつく。
「……花火、観よっか」
「う……うん」
ふたりとも、どこかぎこちなくて……。
見つめ合う時間が終わっても、胸はまだドクンドクンとうるさい。
正直に言うとね、それからはもう花火どころじゃなかったんだ。