それから1ヵ月間、わたしたち4人は何度か勉強会を開いた。

おかげで、わたしと鮎川は前よりいい点数をとることができて、無事に平穏な夏休みを送っている。

花火大会の日を迎え、わたしは慣れない下駄でテクテクと南町の海辺へ向かっていた。

「っ!! かわいい!!」

すでに待ち合わせ場所に着いていたユノは、後から来たわたしを見て満面の笑み。

「果歩ちゃんは白がよく似合うね!! 金魚柄もいい!! 果歩ちゃんすっごくかわいいよ!!」

「ユ、ユノ……恥ずかしいから声の音量を下げて……」

周りの目が気になって、急いでうつむき、顔を隠す。

「ユノも浴衣だね」

「うん! 果歩ちゃんが“着る”って言ってたから!」

合わせてくれたのはうれしい。

でも、やっぱり……浴衣を着るとお相撲さんっぽく見える。

「ちょっとブラブラしてようか。7時半からなんだって、花火は」

「そうなの? あ、わたし、リンゴ飴食べたい!」

人がいっぱい。屋台もずらっと並んでいる。

「え、いいよ! お金は自分で払うから!」

「ううん。今日は出させて?」

「っ……」
ユノは売り場のお兄さんから受け取ったリンゴ飴をそっと差し出してくる。

お金を出してもらったことで、一気に、これをデートのように感じた。

人ごみにまみれ、流されるように歩くわたしたち。

チラッと横目でユノを見ると、やっぱり嬉しそうで……。

宿泊オリエンテーションのときは、お相撲さんのようなこの人とカップルにされるのがすごく嫌だった。

けれど今は、ふたりでいても恥ずかしいとは思わない。