コンビニまでの道を、肩を並べてゆっくり歩く。
夕暮れ時ということもあってか、近くの公園で遊んでいた子どもたちはもういなくなっていた。
「今日はケンちゃんの好きなハンバーグだよ~」
「ほんとにー!?」
保育園帰りの親子とすれちがい、嬉しそうな男の子を見てクスッと笑っていたら、
「果歩ちゃん」
ユノが声をかけてくる。
「ん?」
「……オレ、夏休みはアメリカで過ごすんだ」
「あ、そうなの?」
「うん。親はまだ向こうで暮らしてるからね」
8月になったら行くつもり。そう言って、ユノはまた静かになった。
「そっかぁ。じゃあ、この夏はエイミーたちと遊ぶんだね~」
「どうかな。“サマースクールに参加する”と言ってたし、タイミングがあえば……かな?」
「ふうん」
“サマースクール”ってなんだろ? 夏期講習みたいなもの?
「あのさ……」
「ん?」
コンビニの看板が見えてきたのに、ユノは急に立ち止まる。
一歩前で同じように止まったわたしは、黙って見つめてくる彼に首を傾げた。
数秒の間を置いて、ユノは意を決するかのように勢いよく口を開く。
「7月の30日……花火大会があるよね!」
「え?」
「南町の!」
「……あ~。うん」
南町は少し離れた場所だから、言われてもすぐにぴんと来なかった。
うなずくと、つばを飲んだのか、ユノののど仏が大きく動く。
「い、一緒に行かない!?」
「……え?」
「あ……その……夏の、思い出に……」
みるみると真っ赤になるユノの顔。
家へ誘うのは平気でも、花火大会へ誘うのは恥ずかしいの?
「ダメ……かな?」
恐る恐る、様子をうかがってくる。
「……」
まったく“嫌だ”と感じなかった。
少し前までのわたしなら、何がなんでも断ろうとしていたはずだ。
今はそんな気持ちにはならないし、逆に“行ってみたい”と思ってしまう。
夏休みに入ったら新学期まで会えない。そう考える自分がいる。
「……いいよ」
「ホ、ホントに!?」
「うん! 帰ったらふたりにも言おう!」
「え……」
今年の3月……。
エアメールで“同じ高校に通える”とわかったとき、わたしは嬉しさのあまり、勝手な想像を繰り広げていた。