「ユノ」

鮎川は話を戻すような口ぶりで、ユノに向く。

「お前の言うとおりだよ。たしかに、オレはまだ……」

「……うん」

「けどな、今更どうこうしたいとは思ってねぇんだ。……だから、遠慮なんてするな」

「……鮎川」

「勝負はついてんだ、最初から」

……仲直りしてるのかな?

まったく話が見えないけれど、鮎川はもう怒ってなさそう。

場の空気も落ち着いたものに感じる。

話すふたりをじっと見つめていたら、隣で囁かれる。

「ユノくんもいい人だけど……鮎川もいいヤツだよね」

しずちゃんの横顔から、再び、彼らへと視線を戻す。

微笑みあうふたりの様子に心からホッとした。

「うん。ユノとまた仲良くなれたのは……アイツのおかげなの」

ハンバーガーショップに行ったあの日、鮎川は先に帰ったわたしを追いかけてくれた。

自分のことでもないのに、息を切らして走ってくれたんだよね……。

「ってことで、ユノと山咲で買い出しな」

ユノから離れた鮎川が、すれ違いざまにわたしの肩をぽんっと叩く。

「……」

結局、鮎川は何に怒っていたんだろう。

「果歩ちゃん、すぐ終わるから……少しだけ待ってて」

「あ、うん」

まぁ、いっか。ユノももう普通だし……。