「……え、何があったの?」
さっきまで普通だったのに、なんで怒ってるの? 原因がわからない。
混乱していたら、
「果歩、わたしたちの話……どこから聞いてたの?」
部屋から出てきたしずちゃんが、ため息まじりでたずねてくる。
「どこからって……“限界”ってところからだけど?」
聞き返すと、しずちゃんはわたしを見つめたまま、視線を階段のほうへ向けた。
ユノの様子といい、鮎川の態度といい、妙な展開ばかりが続いている。
しずちゃんの次の言葉を待っていたら、1階から鮎川の怒鳴るような声が聞こえてくる。
「え、ケンカ?」
遠くて言葉はちゃんと聞き取れないけれど、なんだかモメているみたい。
足元に響くような声の大きさに慌てていたら、しずちゃんはやれやれというかのような態度でつぶやく。行ったほうがいいかもね、と。