「お待たせ」

写真を眺めていたら、ユノが部屋に戻ってきた。

彼はジュースを乗せたお盆をテーブルに置きながら、わたしの手元を見る。

そして、優しい目で微笑んだ。

「撮れてるでしょ、ちゃんと」

「っ……」

菜の花畑のことを言ってるんだと思う。

「……うん」

平静を装ってうなずくわたし。

でも本当は驚いていた。

前置きもせずに“撮れてるでしょ”とだけ言ってきたことにびっくりしたの。

それって、わたしと同じように、あの日のやり取りをきっちり覚えているってことだよね……。

「お茶とオレンジジュースしかなかったんだけど」

「わたし、お茶がいい」

しずちゃんはテーブルに戻る。

ユノも普通に、勉強をする準備を始めていて……。

「何、ふたりしてぼうっとしてんの。早く座りなよ、あんたたちも」

しずちゃんが、突っ立ったままのわたしと後ろにいる鮎川に声をかける。

「……うん」

なんだろう、この気持ち……。

“うれしい”という言葉では表しきれない感情が胸にじわっと広がる。

「果歩ちゃんはオレンジジュース?」

「あ、うん……」

同じように覚えてくれていたことに感動しているのかもしれない……。