それから5分ほど歩いて、わたしたちはユノの家の前に到着。
「……ここなの?」
「うん」
風格のある瓦屋根のお屋敷。
どうやらユノの祖父母はお金持ちらしい。
門の扉を開けると飛び石の道があり、それをたどりながら玄関へ向かう。
「お邪魔します」
「お邪魔しまーす!」
「今日、じいさんたちは友だちと食事に出かけてるから、気にしないで上がってね」
「そうなの? ……お邪魔しまぁす」
中に入った瞬間、ヒノキの匂いがした。
家の匂いは、その人のテリトリーのように感じてしまう。
もう会えないんじゃないかと考えていた中学時代や、再会してからの自分たちを振り返ると、こんなふうに家に上がることも不思議に思う。
「ジュース持ってくるから、テキトーに座ってて」
2階にあるユノの部屋は和室だった。
ウチで言うとリビングくらいの広さで、物が少なく、割ときれいだった。
セミダブルのベッドとシックな勉強机、壁掛けのテレビと縦長の木製テーブルくらいしか大きなものは見当たらない。
「アイツ、家でも食ってんだな」
「ん?」
鮎川の言葉が気になって、ベッドのほうへ行ってみる。
「ほんとだ……」
枕もとに置いてあるプラスチックのかごの中には、たくさんのスナック菓子が入っていた。
「寝る前に食べるのかな……」
「食べてそうだよな」
呆れていたら、先にテーブルの前に座ったしずちゃんが「どの教科から始めるの?」と声をかけてくる。
「んとねー」
自分も座ろうとテーブルに向かっていたわたしは、勉強机のそばで立ち止まる。
置いてある写真立てが気になった。
「これ……アメリカの」
日本とは違う町並みでの写真。ユノを含む7名の男女が映っている。
その中にはエイミーとエイミーのボーイフレンドもいた。
手に取り、思い出したのは文化祭の夜……。