「果歩もさ、今が楽しい時期なんじゃない?」
「え?」
急に話を振られてきょとんとしていたら、しずちゃんは口角を上げる。
「あえて、聞かないでおくよ。後夜祭のことは」
「っ!!」
ひ、秘密にしてたのになんで……!
冷やかされると思って、ユノといたことをしずちゃんには言ってなかった。
なのに、どうして!?
「あっ! 鮎川から聞いたの!?」
「ん? 鮎川?」
「とぼけないでよ、しずちゃん! 鮎川から聞いたんでしょ!? わたしとユノが一緒だったこと!」
ユノから誘われたあの瞬間、そばには鮎川がいた。
てっきりアイツが喋ったんだと思っていたら、
「へぇ~」
しずちゃんはわたしの言葉に少しだけ驚いている。
言ってすぐに「あ……」と気がついた。
「まぁ、そんな気はしてたけど……やっぱりそうだったか」
「カ、カマをかけたの!?」
「だって、あんた……みんなと後夜祭の話をしてたとき、妙に静かだったし」
「っ!」
「いつも自分の話ばかりするあんたが聞き専だなんて、おかしいなーと思ってた」
「~~っ」
急に恥ずかしくなり、表情を見られないよう顔を伏せる。
「誘われても断るって言ってたくせにぃ」
うう……今日のしずちゃんは、なんだか意地悪だ。
でも、
「ほら、早く言いなさいよ~」
「なっ、何を!?」
「その後、ユノくんとどうなったのか!」
「な、何も変わってないよ!」
しずちゃんがいつもより明るく見えるのは、きっと新しい恋のおかげなんだろうな……。