文化祭が終わった次の日から、先生たちは「テスト」という言葉を頻繁に使うようになった。
「期末テストで赤点をとった人は夏休みに補習を受けてもらうことになるから、それが嫌ならちゃんと勉強しておくように!」
朝のホームルームで担任の先生は、厳しい顔をして人差し指をピンと立てていた。
お昼休みの間、わたしは食べる気にもなれず、ウインナーをフォークで突き刺したままため息をつく。
「もう最悪だよ……夏休みに補習なんて」
「果歩……もう赤点をとった気でいるの?」
前の椅子に腰掛けたしずちゃんは、パンを片手に、呆れた口ぶりでツッコんできた。
「別にとりたくてとってるわけじゃないよ……」
「中間では何が赤点だったの?」
「数学と英語……」
「え、ふたつも!?」
しずちゃんはパンを頬張るのをやめ、怪訝な顔でわたしを見る。
「あんた、マジで留年するんじゃ……ちゃんと勉強してる?」
「……これだから秀才は」
こういうとき、親友が頭のいい子だとホントつらい。
勉強しても答えが合わない人がいるってことを理解できないんだもんね。
留年の心配までされたら、なんだか悲しくなってくるよ。
「って、さっきから何してるの、しずちゃん……」
話しながらずっとスマホを触ってる。
誰かと連絡をとっているみたいだから気になった。
たずねると、しずちゃんは手を止め、艶っぽい表情でこっちを向く。