それから1時間後、片づけを済ませたわたしとユノは体育館の前で立ち止まっていた。
「え、行かないの?」
ユノはがっかりした顔で問いかけてくる。
赤みを失った空には薄い三日月。
暗さが漂う景色の中、ドアの隙間から漏れる灯りは目に痛いほど強く、流れている音楽は耳に届く分だけでも大音量に感じた。
「どうして? パーティーは嫌い?」
「……嫌いじゃないけど」
「ダンスが苦手なら教えるよ? オレ、得意なほうだから」
ユノはどうしても行きたいらしい。
だけど、わたしは知ってるから……。
「っ!」
「これじゃ踊れないでしょ?」
左の二の腕を優しくつつくと、ユノは驚いた顔で硬直した。
「き……気づいてたの?」
「うん。大丈夫なの? 怪我……」
たずねるとユノは苦笑いを浮かべ、「ただの打撲」と返してくる。