「無理やり連れ出されたんだ。その後噴水に落とされて、代わりの服を用意すると連れられた部屋にはドレスが用意してあったんだぞ!」

「……そうだったな。それからジルベルトは領地に帰ったんだったな」
「原因の一つだ」

「……男装した令嬢だなんて言われていた事もあったものね。ジルはそれだけ注目されていたのよ」

 されなくて結構! 変な空気になってしまった!

「オフィーリアの知らない話はやめよう。ごめん、昔の話なんだ」

 オフィーリアは僕達の幼少時代を知らない。


「えっと、皆さん昔から仲が良かったのですね」

 気を遣わせてしまった!


「そうねぇ。私には友人と呼べる人はいなかったけれど、ルシアンがいてくれてルシアンはジルとだけは仲が良かったから私もジルといる事が多かったの。それからジルは領地に戻っちゃったけれど、相変わらずの関係ね」

「そうだな。茶会でもフローリアとジルベルトといることが多かった。ジルベルトは幼い頃から会うことも多かったから幼馴染で腐れ縁だな」
「良いですね、そういう関係性って」

 幼馴染……オフィーリアはあの男(ハリー)を思い出したのだろうか。学園であの男を見かけるとオフィーリアを見ているんだよな……すごく嫌だ!

 男装した令嬢だなんてオフィーリアに聞かれたくなかった。あのオンナが言い始めたんだよな。あのオンナは一つ下だったから来年学園に入ってくるのか……考えただけでイヤになるが学年が違うから校舎は別になるだろう。来年はオフィーリアと同じクラスだと良いんだが……

 食事を終えてレストランを後にした。

「美味しかったね。ジルベルト様元気がありませんね……先ほどの令嬢の件?」

「あぁ、ごめん。考え事をしていたんだ」

「そうなの? 余計な事は言わないでおこうと思うんだけど……あの令嬢、本当はジルベルト様と仲良くしたいと思っているんじゃないのかな?」

「……仲良くしたい相手にする態度ではない。自分をバカにする相手と仲良くしたいと思う?」

 僕の着替えにドレスを寄越してくるようなオンナだ! 我儘で自分勝手で人をバカにするような令嬢となんて仲良くなりたくない。


「……思わない」