教会に入るとオフィーリアを見る男の子がいた。それは物珍しそうな眼差しだった。

「……貴族だよな? シンプルな装いに見えても仕草や話し方が違う」

 神父に教会を案内されていて、にこにことしている。この教会はステンドグラスが自慢だ。色とりどり花をモチーフにしてあり柔らかい雰囲気が心を落ち着かせる。


 ステンドグラス職人がこの町にはたくさん住んでいて、ステンドグラスを用いた建物も多い。最近ではステンドグラス風の照明器具が人気になっている。特に目立った産業がない領地だからこう言った自慢が一つでもあると嬉しい気持ちになる。


 ……どこの家の子だろう?


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「ご案内はこれくらいです。ごゆっくりご覧ください」

 神父様は頭を下げた。


「お忙しい中案内してくださって感謝致します。それではもう少し見させてください」

 笑顔で神父様はこの場から離れた。


「お嬢様、この街は素敵ですね」

「えぇ。本当に。そうだ! せっかく教会にいるんだものお祈りをさせてもらいましょう」

 
 ……アンドリューが元気になりますように。

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「お嬢様、随分熱心に祈りを捧げていましたね」

「願いは一つだけだもの」


「……あの方を見返すとか?」

「あの方? ってハリー? まさか! アンドリューの事に決まっているでしょう! もう!」


 ふふっと笑いながら教会を出た。


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「ジル様、こちらにいらしたのですか?」

 神父に呼ばれて手を止めた。

「あぁ」

 今日は掃除をしに教会に来ていた。

「いつもすみません。領主様のご子息まで掃除をしてくださるなんて……本当に頭が下がります」

 深々と頭を下げる神父。

「いや、僕も町が綺麗だと嬉しいし、みんなで美しい町にしたいと思っている。そうだ、新しい苗が来週届くから、有志を募って植えていきたいと思う」

 季節の花は年に何回か植え替えする。球根の物は掘り起こしてまた来年に備える。増えた球根は領民にも配り各家で育ててもらう。そうする事により花が増えて豊かになる。些細な事だけど喜ばれている。