「……あはははは……いいえ全く。わたくしまだ学生ですもの」

 乾いた笑いで誤魔化す。この子息は二十二歳? なんでこの歳まで独り身なんだろ。


「私もそろそろ身を固めようと思っていたところなんだ。卒業まであと三年待ってあげるから、嫁に来るかい? 一生キレイなドレスで着飾れる生活を約束しよう」


 待ってあげるって……何? この子息ちょっとヤダ。

「……ドレスには興味がありませんので、どうか他の方を」
「興味がない? あぁ、そうか! ドレスを着なくても自信があるってことかい?! それは良いね。他にも候補はいるんだが君はいいね」

 ドレスを着なくても……って何? 変態さん? 無理だ……

「生まれたままの姿で宝石だけを身に纏う。うん、実に芸術的だ!」

 ……変態だ! 絶対変態!!

 鳥肌が立ってきた。なんとかしてお母様と合流しなきゃ……

 よし。逃げよう! とキョロキョロ視線を、


「オフィーリア様~オフィーリア様~」

 お母様のメイドアリサの声。とにかく助けが来たという事で、返事する!  

「はーい! はい、はい! ここよ」

 手を振って存在をアピールをした。


「奥様がお呼びです。至急お邸に戻る事になりました」

 ……何かあったのかしら? でもナイスタイミング!

「オフィーリア嬢! 近いうちにまた会おう。その時は婚約についての契約を、」
「ごめんなさい。他の方にお譲りしますわ。今日はありがとうございました。さようなら」


 返事を待たずに去った。こんな失礼な小娘嫌でしょう?! 

「ちょ、ちょっと! 待ってくれ」

 
 はぁ、はぁ……よし、追っ手は? いない。息を整える。


「お母様、どうかしたの?」

「急に手紙を貰って……とにかく帰りましょう」

 何があったか分からないけれど家路へと急ぐ。


 ******

 急いで家に帰る。

「あれ? ステファン様? ここ私の家ですよね? 今日はお休みでボートに乗るのでは?」

 ハテナがいっぱい浮かんだ。

「そうだね。だから迎えに来たんだ。断れない茶会があるのなら私に相談してくれればよかったんだよ。夫人もです」

 ステファンがなぜか家に居て、家でお茶を優雅に飲んでいる。不思議な光景……