「……そう。ダンスが上手な執事なのね」


 なんだよその間は! 哀れな目で見ないでくれ。






「オフィーリアの体幹の良さに驚いた」
「どうかしたのか?」

 二人とも楽しそうに戻ってきた。

「ダンスを終えて戻ってくる途中で、床が濡れていて転びそうになったの。ルシアン様が助けてくれたから転ばずにすみました」
「ちょっと遅かったら転んでいたな。オフィーリアが堪えていた顔が面白かった」

 話を聞くとルシアンがオフィーリアの手を取って一瞬抱きしめた形になったようだ。ルシアンを睨む。

「大丈夫でしたの? 足捻ったりしてない?」
「はい。足腰は丈夫ですから」
「万が一があっては困るから今日のダンスはやめておいた方が良いわね。そろそろスイーツを食べにいきましょう」


 さすがフローリア嬢。それとなくダンスを断る口実が出来た。


 それからスイーツを嬉しそうに頬張るオフィーリアを見ていたら胸がいっぱいになった。

「このオレンジのムース美味しい」
「そんなに美味しいのかい?」
「さっぱりしていてどれだけでも食べられます」
「どれだけでもって……そんなに美味いのか」
「食べてみます?」


 ヒョイっとスプーンを僕の前に出してきた。これを食べろと? 良いのか? 出されたものだから口に入れる。これは中々恥ずかしいな。いや、アリだけど!

「……美味い」


「柑橘系といえばジルベルト様のお屋敷で頂いたレモンケーキも美味しかったですね! いただいたレモンはハチミツに漬けて紅茶に淹れて飲んでいます」

 帰りに土産として渡したんだったな。すごく喜んでくれていた。