「全く迷惑なんかじゃないよな、ジルベルト」
「そうよね。ジルがダメならお兄様に相手をさせるところだったわ」

 ……なんで! それは居心地が悪い……


「それも悪くはないけれど、ステファン殿が来たら皆気を遣うだろうな」

 ザワつくダンスパーティとなりそう。うん、うん。と頷く。

「だって、お兄様が殿下に会わせたからこんな事になったのでしょう?! せっかくオフィーリアと仲良くなれたのに嫌われちゃったらお兄様を一生許さないんだから」

 私がフローリア様のお家に行かなければよかったのでは……言えないけど。


「ジルベルト、パーティーの時はちゃんとしてこいよ。そのぼさぼさの髪と変なメガネもな!」

「……分かった」

 そうだわ。ジルベルト様の素顔を見たことない。目が悪いのにメガネを外したら周りが見えないんじゃないのかな?


「これでパーティー問題は解決ね! あとはなるべく一人での行動は控えた方が良さそうね。こういう時にクラスが別だと不便よね」

「皆その辺は弁えているだろうが……同格の家、それ以上の家、オフィーリアの知り合いなどは要注意だな」

 特に面倒な家は昔からある古い家で、ここ最近はパッとしない感じの家だと言う。名前だけ立派な家も注意? さすが侯爵家嫡男で学年一位の秀才は違う。


「でも、子息に知り合いなんていませんよ? そこは大丈夫かと、」
「グレイヴス子爵家の嫡男は? 幼馴染だと先日言っていただろう」

 フローリア様と殿下が幼馴染の様なものだと言っていた流れで、私に幼馴染はいるのか、と聞かれたんだった。

「単なる幼馴染ですし、()()特に親しいわけじゃないですよ。母親同士が仲良いので夫人とはたまにお会いするくらいで、」
「……()()?」

 ピクリとジルベルト様の眉が動いた。

「? はい。幼馴染ですから、今は挨拶をするくらいの関係で丁度良いと思っています」

「単なる幼馴染? 親同士が仲良いのなら婚約の話とか出なかったのかい?」

 ジルベルト様も中々の推理力?

「ありましたよ。十歳くらいの時でしたけど、親が勝手に言っていただけで()()()断りました」

 あれは黒歴史だから絶対に言わないでおこう。今となっては本当に婚約の話がなくなって良かったと思っているし、あの時のハリーに感謝している。