「先日のサツマイモを使ったスイーツも美味しかったが、今回のタルトや揚げたものも美味しい。王太子も喜んでいた」

 そうなんです。呼ばれた先は王宮の一角で王太子殿下とお会いしましたの……う、嘘でしょっ!

 頬っぺたをつねりましたが痛かったから現実なのね……

「カルメル伯爵家のシェフは凄いな。あのサツマイモがこんなに見目よく美味しくなるとはな。この素揚げ? というものはシンプルでとても美味しい。ただの塩ではなく粗塩? などのこだわりも見られる。タルトやカップケーキなんかは女性が好みそうだ」

「ありがとうございます。シェフと先生に伝えます」

 嬉しすぎて? 驚きすぎて卒倒したりしないよね。はぁっ。緊張しすぎて早く帰りたい。王太子殿下ってもっと怖い人だと(勝手に)思っていた。思ったよりも優しそうだけど目を合わせることは出来ない。吐きそう。


 フローリア様のお兄様ステファン様から王太子も話が聞きたいと言ったから聞かせてやって欲しい。と言われ断れなかった。遠くで王太子殿下を見たことがあるけれど表情を崩さない凛々しいお顔が少し……怖くて。

 “とって食いやしない。向こうが話を聞きたがっているのだから、態度が悪かったら私が注意をするからオフィーリア嬢は聞かれたことを答えれば良い”と言われた。

 救いはフローリア様とジルベルト様もいる事だった。フローリア様は王太子殿下と親戚なんだそうで、王太子殿下の事はお兄様のような存在などと言っていました。さすが公爵家……次元が違うと遠い目をする私。

 ジルベルト様は栽培の話や活用法などを聞かれ答えていた。なぜお父様や伯爵様ではないかというと、王太子殿下の代を担う年代の私達と交流をしたいと言われたから。家を継ぐのはリューだけどね。早く大きくなって頼りない姉のために頑張って……


「二人とも今日はありがとう。とても有意義な時間だった。国策となるようサツマイモの栽培を行いたい」

 王太子殿下は満足した顔持ちで帰りにはお土産を用意して下さった。その後はフローリア様の邸でお茶をする事になり公爵家の馬車に乗せてもらった。

「お土産ってなんだろう……」

 ポツリと呟く。

「王宮で飲まれている殿下の好きなお茶とかお菓子だと思うわよ」