うちの領地は決して広くは無いが、自然も豊かで隣の領地から魚介類が持ち込まれる市場なんかもあって、そこそこ賑わっている。

 
 自然豊かで牛の飼育が盛んで新鮮なミルクも飲めるし、チーズだって美味しい。加工されたものは近隣の街でも人気になっている。地味だけど好評なんだから!


 最近王都付近は建築ラッシュが続き、埃っぽいのが悩みの種だ。だからアンドリューは領地に行き空気のいいところで療養するのがいいと私も思う。アンドリューが行くのなら私も一緒に行って支えたいと言う気持ちもある。


 そんなこんなで、領地へ行くと決まってから引っ越し準備となる。領地までは馬車で急げば一日半ほどだけど、アンドリューの体調も考え三日かけて行くんですって。

 いつもは馬車で駆け抜けていた場所にも泊まる事ができてまず1泊目は王都近くの宿に泊まった。

 いつもなら通り過ぎる町。夕方少しだけ宿の辺りの散策をお母様に許可されたので、侍女と護衛を連れて行く事になった。


 領地へはお母様も行く事になった。社交シーズンになったら、お母様はまた王都へ戻る事になるけれど王都に残ったお父様は寂しい……と言っていたし、お父様もなるべく領地へ帰るようにするって事で今回の領地行きが決まった。


 一緒に来てくれた私の侍女はメアリーといって私の二つ上の子爵家の三女で姉のような存在。そして流行に敏感なおしゃれさん。今回領地へ向かう為に三日間かけて行くので色々と調べてくれていた。


「お嬢様、このお店ですよ! キャンディ職人が作っていて店頭でのパフォーマンスが人気なんですって」

 店頭横の一面に張られたガラスの内側で、職人が柔らかいものを伸ばして包丁で切っている。

「わぁ、色とりどりで可愛いわね! これがあの固いキャンディなの? こんなに柔らかいのに」

 今の時点では熱々で熱いうちに伸ばして包丁で切って冷ますのね! すごい! 職人技だわ。

「坊ちゃまのお土産にしたらいかがですか?」

 本当はアンドリューと一緒に町を楽しめたら一番良いんだけど……

「そうする」

 小袋に入ったキャンディをたくさん買った。領地の本邸に持って行くお土産にしよう。


 町を色々と見て回る。楽しいわね~。夕方の市場は買い物客も多いわね。


「お嬢様、暗くなる前にそろそろ……」