「無害なんだね……分かる気がする。食い気しかない田舎娘ってことか」

 リューめ!

「フローリア様は洗練された美しい令嬢だから田舎娘が珍しいのかも」

「それですよ、お嬢様!」

 急に先生が話に入ってきた。先生も家族会議に参加してたんだった。このところ研究が進んでいないらしくって影が薄くて。

「どれ?!」

 キョロキョロと辺りを見渡す。何にも無いけれど。

「サツマイモですよ」

「え?」

「自信作があります」

 手を叩きシェフを呼ぶ先生。

「皆さんが集まるのでお茶請けにとシェフと作りました」

 ジャーン。とスイーツを出すシェフと先生。

「見た目は綺麗だね。カップケーキかい?」

 お父様がまじまじと見ていた。お母様も興味深そう。

「サツマイモを入れたケーキの上に、裏漉ししたサツマイモに生クリームを加えて滑らかにし、絞り袋に入れケーキの上にデコレーションをした後、金箔を乗せました」

 金箔乗せちゃったの! お芋に?

「イメージが変わったのは認めるけれどサツマイモは家畜の餌というイメージが払拭できない。いくら美味しくても貴族は食べないよ」

 首を振るお父様、お母様も手が伸びない。

「いただきます!」

 手を伸ばしパクりと口に入れる。ちゃんと一口サイズに切ってあるんだもの。

「んんんっ……おいひい。クリーミーで濃厚で甘くて舌触りも良いわ。もう一つ」

 もぐもぐと食べ進める。

「リューも食べて」

 リューはサツマイモの美味しさを知っているから躊躇なく口にいれた。

「美味い」

「お父様もお母様も食べないなんて勿体無いですよ、リューもおかわりしてますよ」

 リューの二個目は私が口に入れたんだけど……

「そこまで言うのなら……」
「そうね。シェフと先生が考えたものだものね」

 お父様とお母様も先ずは一口と言わんばかりに更に小さめに切って口に入れた。

「……! これは驚いた」
「本当に! 美味しいわ……」

 本当に美味しい。これがあのゴツゴツとした歪な形の土から出てきたお芋だとは到底思えない程の美味しさだった。

「喜んでいただけて嬉しいです」

 シェフが先生とハイタッチをしていた。シェフにとっても難題だったのかもしれないわ。このお菓子はシェフと先生の努力と汗の結晶! これをお土産に持って行く事にした。