久しぶりに夫人に会った。相変わらず優しくてキレイだと思った。いくらお母様の友人だとしても子爵夫人だからちゃんと弁えないと。

『またうちの家族も交えて食事でもしないか? オフィーリアとアンドリューが帰ってきた祝いに』

『お気遣いありがとうございます。まだ慣れぬ校舎ですし少し急いでいますので失礼しますわね』

 ハリーはハンサムで人気がある故に、いろんなお茶会に招待され顔を出している。と友人から聞いている。

 婚約の話が出た時に自分磨きに精を出すとか、友人を作って遊びたい。とか言っていたものね。久しぶりに会ったから声でも掛けてやるか! みたいな感じがみえた。
 
 そういえばリューは元々ハリーの事をよく思っていない感じだった。身体が弱くて私にべったりくっついている子だったから、私が取られると思って寂しかったのかと思いきや、ハリーという人間の本質? を見抜いていたのかもしれないわね。男の勘? それよりも今は遅刻しない事よ!


 急いで東棟の教室へ向かう。

「はぁ。間に合った……」

「ぎりぎりだったね。何かあった?」

 ランチを一緒に摂っていたスザンナがホッとした顔をしていた。

「ハリー様に声を掛けられたのよ」

「久しぶりに会ったんじゃない? 何を話したの?」

 スザンナは幼馴染だと知っている。

「大した事話してないよ。急いで来たからそれどころじゃなくて。遅刻したら減点でしょう?」

「そうよ。ヒヤヒヤしたよ。良かった間に合って」


 遅刻や忘れ物に厳しい先生だから気をつけないと! 授業が始まり集中していたらハリーの事を、すっかり忘れた。