「もう、オフィーリアちゃんったら。今まで通りで良いのに。主人もハリーも元気よ。良かったらまたハリーと仲良くしてあげてね。オフィーリアちゃんが領地へ行ってしまって寂しがっていたのよ」


 気楽に話せる相手がいなくなったとかそんなレベルでしょう。学園ではきっとモテているでしょうから(顔が良い分)私のことを思い出す暇なんてないはず。本当に寂しいと思っているなら手紙の一つでもよこしてくるだろうから。それもなかった。故にどうでも良いとか思っていたんだろうと、想像がついた。


「私たちも年頃ですから以前のように……というわけにはいかなさそうですが、機会があればご挨拶したいと思います」

 にこりと笑い、他にも来ていたお母様のお友達に挨拶をした。中には息子と一度会ってみない? といったお誘いもあった。

「機会があれば? その、是非……」

 会いたいとは思わないのだけど断るのも失礼なのかもしれないし、しどろもどろになって答えた。

「……なんで疑問系なのよ。ごめんなさいね。王都に戻ってきたばかりで学園の準備もバタバタとしていてまだ余裕がないっていうのは本当なのよ。アンドリューも向こうで療養して元気になってきたものだから、この子達どこへ行くかとかそんな話ばかりしていて……」

 新しいお店がたくさん出来ているんだもの。行かなきゃ勿体無いでしょ! 正直流行りとか分からないから、付いてかなきゃバカにされるよね?


「あら。変わらず仲が良いのね。アンドリュー君はお姉様っ子だったものね」

 ハリーの母、子爵夫人が懐かしそうに言った。

「オフィーリア、忙しいのに挨拶に来てくれてありがとうね。戻って良いわよ」

 礼をして邸に入った。商人は学用品以外にも品物を持ってきてくれていて、気に入ったものは購入してもいいとお父様が言ってくれた。アンドリューはまだ本を選んでいたので、私もその様子を眺めていた。

 イラストが多い本って見ていて楽しいわよね。そう思い何冊か手に取った。するとなぜか先生も参加し始めていた。先生は領地にいる間だけではなく王都に戻ってきても私達の先生をしてくれることになった。

「給料も申し分なく、寝食にもありつける。研究費まで援助してくださるのだから、お嬢様には上の下と言わず上の中くらいの成績をお約束します」

 先生はお父様に宣言していた。ガリ勉反対! 普通で良い! と私が言っても、先生がやる気になっているのだから期待に応えなさい。と言われた!

 リューはすでにトップクラスに入れるくらい優秀だし、先生は研究者なのにリューの剣術の相手までしているからお父様やお母様からも気に入られて信頼があるのよね。 
 
 一体何冊選んでいるよの、先生ったら。うちの図書館に置く本も選んでいる? あ、そうですか。楽しそうで何よりですね。