「お兄様が助けてあげられるでしょう?」

「本人の努力が大きく左右するし、あの子を潰したくない。フローリアもルシアンも分かるだろう?」

 ルシアンの家は侯爵家、しかも嫡男だから生まれた時から高位貴族として厳しく育てられている。学年で上位の成績は当たり前の世界だ。敵も味方も多い。フローリアだって幼い時から“孤高の華”なんて二つ名のせいで友人がいなかった。可哀想だと思っていたが、学園で友人が出来た。

 それからのフローリアは楽しそうだったし、友人となったオフィーリア嬢は素直で、よく食べ気取らない性格のつい助けたくなるような可愛らしい子だったし好感を持つのにそれほど時間は掛からなかった。

 この私が一介の伯爵令嬢の誕生日会や地方の結婚式に出るなどとあり得ない行動だ。

 社交界デビューするという誕生日会の日は忙しい合間を縫って少しの間顔を出すことが出来た。行った瞬間に笑ってしまったのだが……ジルベルトの色を纏うオフィーリア嬢にピタッとくっついて離れないジルベルト。

「婚約おめでとう。似合いの二人だ」

 心からそう思った。プレゼントは花束とオペラの鑑賞券と食事券。二人で楽しめるようにと最上の席を取った。レストランは今予約が取れない店で有名なシェフがオープンした店だ。これくらいなら負担にならないだろう。

「わぁっ。良いんですか!」

「勿論。楽しんでおいで」

 ジルベルトにも礼を言われた。こいつのこんなに柔らかい表情を見るのは初めてだった。

 挨拶をし会場を出ようとしたのだが、よからぬ話が耳に入る。なんでもオフィーリア嬢の幼馴染が何かやらかした? ふむ。これは聞き捨てならないな。調べておこう。



 それからその幼馴染は騎士団に入団が決定。厳しい隊に入れるようにしておいた。その分早く腕が上がるだろう?
 私はこう見えて優しいから、それくらいは当然の事。



「お兄様、オフィーリアとジルに声をかけにいきましょう」

「そうだな」

 ルシアンと三人で声をかける。

「幸せになるんだよ。何かあったらすぐにフローリアに相談すると良い、力になるぞ」

「ありがとうございます。ステファン様」


 今まで見た中で一番キレイな笑顔でそう言ったオフィーリア嬢。


 私までその笑顔で籠絡するとは……末恐ろしい子だ。動悸が激しい……