ジルベルト様の方を見て久しぶりという令嬢。あっ! この子……レストランでジルベルト様に声を掛けていた子だわ。ジルベルト様の前にドンっと立ち指を差した。

「わたくしというものがありながら婚約をするとは何事ですのー!」

 あら。あらららら……ジルベルト様が虫でも見るような目つきになった。

「……噂の珍入生だよ、オフィーリア行こう」
「この方が? でもいいの放っておいて……」

 周りにいる生徒がざわついていた。

「お待ちなさい! これは婚約詐欺に当たる行為なのよ! 訴えても良いくらいなんだからっ」

 ……ジルベルト様このような方と婚約の話が? それはちょっと同情に値するかも。

「キミ一体なんなんだ? 僕はキミと婚約の約束なんかしてないし、ご覧の通り隣には愛しの婚約者がいるんだけど」

 私の肩を抱き寄せるジルベルト様。そして耳元でごめん。変なことに巻き込んで。と言ってくれたので頭を左右に振っておいた。この令嬢の妄想なのね。

「忘れたとは言わせないわよ! あれは十年前の事よ。噴水に落ちたあなたを助けて服まで用意してあげた時に、この人には私がいないとダメなんだと思い将来は私と一緒にいなさいと言ったでしょう!」

「は? キミ何言ってんの? わざと噴水に落としてから用意してきた服は……女性用だったよね? 子供ながらにキミのこと嫌いだったんだよね……」

 ジルベルト様が黒い……そして周りの生徒がザワザワとし始めた。

「ひ、ひどい。そんなことしてないっ!」
「どういう思考回路してるいるのか分からないけれど、記憶の改ざんをするのはやめろ。マジ迷惑」

 ジルベルト様じゃない話し方……すごく怒っていることだけは伝わるけれど……

「僕に二度と声を掛けてこないように。警告という形での抗議をするからそのつもりで」

「私はっ、ずっと待ってたのに! 私が十六歳になるまで!」

「はぁっ……一回目の抗議の時は子供だったから仕方がない。と母が許してあげるようにと言ったんだ。するとキミの両親が教育を見直すと約束した。何も変わってない!」

「しっかりと教育されたわよ! 成績だって上位だし、それに貴方のお母様はもう亡くなった、」