「タイミングか……確かに今がタイミングなんだろうな」
「どういう意味?」

「変な行動に出て来たから、こちらとしては見過ごすことはできない。オフィーリアの身に何かあったらと思うと居ても立っても居られないからね。あの男が大人しくしていればオフィーリアの耳に入れるつもりもなかったんだけど、正直言ってグレイヴス子息の社交界での評判はよろしくない。だからフローリア嬢やルシアンのような高位貴族や殿下と面識のあるオフィーリアと婚約したらよろしくない評判も風に吹かれたように飛んでいくって所かな……」

「噂では少し……その、若い頃の子爵にお顔が似ているからマダム達に大人気だとか? は知ってるけど」

 マダム達から人気が出るとなるとご主人様はいい気がしないし、自分の妻が学生時代に憧れていた人とそっくりで妻達が学生時代に戻ったようにキャピキャピしている姿を見て面白くないのだそう。

 でも私の知っている子爵は真面目だし、ハリーとは違って誰にでもいい顔をするタイプじゃない。


「僕的には大変不愉快だから抗議しておく」
「私もお父様に言っておくね」

「義母上はグレイヴス夫人と懇意にしているからその点では申し訳ない」
「お母様も分かってくれると思うから大丈夫だと思うよ」


 という事で、両親にハリーの手紙の件を話した。

「オフィーリアと婚約して好感度を上げたいんでしょうね」

「ロワール伯爵家に申し訳ないからうちからも子爵に言っておくよ。ハリーは幼い頃から知っている子だからこれ以上道を外すような事がないように願う。しかしフィーを巻き込むのならその時は潰すか……」

「え! お父様! 怖いんだけど」

 心の声じゃなくて声に出ちゃった!

「ふふっ。それが嫌なら、真っ当な道に進むでしょう? 私達も老婆心ながら心配しているということよ」

「お母様も物騒!」

 大人って怖い! 手紙はそのまま送り返した。身に覚えがありません。と。

 ******

「ハリー! 良い加減にしてちょうだい」

「何が?」

「ロワール伯爵から手紙が届きました。カルメル伯爵からは娘には婚約者が居てお互い思い合っているから諦めてくれ。ですって! 次はないようにとの事よ……オフィーリアちゃんには婚約者がいるのだから諦めなさい。それと貴方の行動で我が家の評判が……旦那様の評判が悪くなるのよ」