「……オフィーリアに素敵だなんて言われると嬉しくて天にも昇る気持ちだけど、ごめん。オフィーリアが知ったら嫌な気持ちになるかと思って言わなかったんだ。これからはちゃんと僕の口から言うから……令嬢達の気持ちは迷惑なんだ。僕はオフィーリアが好きでずっと一緒にいたいから、変な誤解もされたくない」

「ちゃんと言ってね。ジルベルト様から言われたら信じるから」

 僕の目を見ながら手をぎゅっと握ってきたオフィーリアから手を繋がれたのは初めてだったし、すごく嬉しい。

「オフィーリアも何かあったらちゃんと教えて。約束してくれる?」
「うん」

「あれからさ、グレイヴス子息とは何もない?」
「うん、何にもな、あっ!」

 あっ! ってなんだ! あいつオフィーリアに何かしやがったのか! 許せん。

「……何か、言えないことかな?」

 極力優しく……気を抜くと無表情になりそうだ。怖がらせるつもりはない。

「昨日手紙が届いたんだった。でも昨日はジルベルト様とリューの誕生日プレゼントを選びに街へ行ったから、帰りがいつもより遅くてすぐに食事をしてから湯浴みをして眠っちゃったの。だから内容は確認してない」
「そうかい、今日の帰りはオフィーリアの家に寄ることにしようかな、内容が気になるから」

「手紙の内容が気になるの?」
「そりゃあね」

「良いけど、ジルベルト様変なの」

 手紙の内容は個人情報だから言いたくないよな……僕が手紙を貰ったり(受け取ってない)告白されたりした令嬢の名前を出すのは相手に失礼だから言いづらいと思ったのと同じ。オフィーリアの友人関係にまで口出したら(精神的)DV男になりそうだ……どこまでなら良いのか一度話し合ったほうが良いのかもしれない。

「ごめん、どうしてもあの時の言葉が気になって……」
「あの時?」
「連れて帰られる前の“思い出せ!”って言葉。オフィーリアは忘れているだけで婚約の約束をしたとか、」
「してないっ! 絶対ないもん! 授業始まるから行くね、次は小テストなの。ルシアン様に成果を見せなくちゃいけないから、じゃあ」

「待って。送っていくから」
「ジルベルト様の教室の方が遠いんだから間に合わなくなるよ、あとでね」

 逃げられた……あれは怒っているよなぁ。