「そうだったんだね。スザンナ嬢に悪い事をしたかと思ったけれど、そうではないようで安心した」
「スザンナはね、面倒見が良くて友達のいなかった私の初めての友達なの」

 スザンナ嬢はオフィーリアの初めて友達だったのか。今後も交流はありそうだからちゃんと覚えておこう。オフィーリアといつものテラスへ向かっている途中に、グレイヴス子息の姿を見た。何をしているのだろうか。と気になったがやはり放っておこう。また絡まれても面倒だし。


 その後いつも通りにランチを摂りオフィーリアの移動教室先まで送り届けた。さて教室に戻るか……といったところで、二年生の令嬢に声をかけられた。

「ロワール子息、ごきげんよう。噂では婚約をされたとか?」

 は? 無視をしたいが、目の前に令嬢はいる。この令嬢さっきグレイヴス子息と一緒にいなかったか?

「えぇ、まぁ」
「あら、その気のない返事は愛情が伴ってないからとか? 政略結婚だと聞きましたわ」

 は?

「ロワール子息は侯爵令息・公爵令嬢の我儘に付き合わされて可哀想ですわ」

 は?

「……話になりませんね」
「ストレスが溜まらない? 私が癒して差し上げますわよ。癒し系と噂の婚約者よりも、ね」

 聞けば聞くほど話にならない。そしてこの女チラチラと目線が動いていた。

 ん? ガラスに映るその姿は……グレイヴス子息か。何を企んでいるのやら……ろくな事じゃないだろう。