男の子に声をかけてハンカチを出した。こちらをチラッと見た男の子の瞳は澄んだブルーの瞳でアッシュブラウンの髪の毛の男の子。地面に膝をついて女の子を立たせていた。

「君は?」

「あ、すみません。通りがかりの者で怪しい者ではありません。怪我をしているのでばい菌が入ったら大変なので……少し我慢してね」

 女の子の怪我をした足にハンカチを巻きつけた。もう一枚のハンカチで女の子の涙を拭いた。

「あら! 偉いわね。もう泣き止んだのね」

 ぐすん。と鼻を啜りながら女の子は私たちを見た。

「お姉ちゃんありがとう、お兄ちゃんも」

「一人なのかい? お母さんは一緒じゃないのか?」

 男の子は優しそうに女の子に声をかけていた。

「お兄ちゃんと一緒」

「あら、お兄ちゃんはどこにいるの? 一緒に探しましょうか?」

 こくん。と頷く女の子、でもすぐにお兄ちゃんが慌てて走ってきた。


「マリー!」
「お兄ちゃん!」

「転んだのか? 少し目を離してしまった。マリーごめんな」

 マリーちゃんの頭を優しく撫でていた。

「マリーちゃんって言うのね、お兄ちゃんと合流できて良かったね」

「うん! お姉ちゃん、お兄ちゃんありがとう」
「すみません。手当までしてもらって……あ、ハンカチ」

「良いのよ、ばい菌が入ったら大変だもの、帰って消毒してね」

「本当にありがとうございました」

 マリーちゃんはお兄ちゃんの手をしっかり握って手を振ってくれた。

「バイバーイ」

 女の子が手を振るので私も手を振った。するとマリーちゃんを起こした男の子が声を掛けた。

「待った! 痛かったのによく耐えたね、これはご褒美だよ」

 男の子はマリーちゃんとお兄ちゃんにキャンディを渡していた。するとマリーちゃんは笑顔で手を振って帰って行った。


「お兄ちゃんが来てくれてよかったです」

「あぁ、そうだね。それよりハンカチは良かったの? 見る限り高級な感じがしたけど」

「ふふっ、アレは私が刺繍したものですから、高級ではありませんよ。それに人助けに使えたのならとても嬉しいです」

「そうなんだ。君はこの町の人じゃないよね?」

「えぇ。王都からカルメル領へ向かう途中です」

「カルメルの町はのんびりしていて良いよね。カルメル領のチーズが好きで良く市場で買うんだ」

「私も好きです」