「両親がただ言ってるだけだろ……僕たちはまだ成人前なんだから婚約なんてまだ早い」
「でも婚約者がいる子たちだってたくさんいるじゃない?」
「それは高貴な人達だよ。僕は子爵家、オフィーリアの家は伯爵家だろ?」
私と話しているのはハリーという幼馴染。双方の両親が私達に婚約の話をしてきた。二人で話して来なさいと言われ今に至るの。
ハリーとは仲が良いからこの話を聞いた時、内心は嬉しかった。でもハリーは違うみたいで……口に出さなくて良かった。
「……そうだね」
「まだ早いと僕から両親に言っておく。別にオフィーリアの事が嫌いというわけではない。婚約をしたらお互いに好きな事が出来なくなる。例えば異性とのちょっとしたやりとりなんかもいちいち報告するのも面倒だし男同士で遊びたい時もある。それに関して文句を言われても困る。学園に入学してどこにいるかだとか、誰と交流があるかとか、放っておいてほしい」
……なんか、急に冷めてきた! 自分勝手だわ。早いうちにわかって良かったとさえ思った。
「……そうだね」
「もちろんいつか(誰かと)婚約はするさ。でもそれは僕のタイミングでしたいんだよね。それでも良かったら待ってくれても良いけど?」
どんどん腹が立ってきた。僕のタイミング?バカにするのも良い加減にしてほしい。
返事すら面倒で言葉にならない早くおわんないかなぁ。
「条件としては僕がなにをしても、どこにいようと、誰と交流しても文句は言わないでほしい。それが守れるならいつかオフィーリアの事も真剣に考えるかも」
……考えてもらわなくても結構! 最近流行りの録音機器の魔道具があればこの残忍鬼畜発言を録っておけたのに……備えあれば憂いなし! お父様におねだりしようかな。
「オフィーリアはまだ子供だろ? もっと自分磨きをして立派なレディになれば僕なんかより良い男はたくさんいるぞ! 僕の横に立つには美しくないといけない」
自分が大好きだとは知っていたけれどここまでとは……でも自分磨きは確かに必要よね。私はまだ十二歳だもの。ちなみにハリーは十三歳。
「僕はこの王都の街で自分磨きに更に精を出すよ。王都にいないと流行りに乗り遅れるし、他の貴族にバカにされる事になる。流行は王都から発信されるんだ!」
まだ続くのかな……もう飽きた。ハリーへの恋心が一気に崩れ落ちた瞬間だった。初恋は儚いって本で読んだなぁ。
え? 趣味が悪いって? だってこの時点でハリーくらいしか子息との交流がなかったもの。