「別にどうもしないです」
「嘘だあ! ひーくんなんて目が合った女子全員落としちゃうで有名だよ?」
「……うーん。かっこいいなあ、とは思いますけど」
はじめて目が合った瞬間のこと、思い出していた。
近くで見るとより一層かっこいい、とは思った記憶あるけど、やっぱり恋に落ちたなんて記憶は……ない、かなあ。
「そういう先輩は、どうなんですか」
「え、あたし?」
「……ひじ、……榛名くんと随分仲良さそうじゃないですか」
危ない。
いつもの癖で名前で呼びそうになった。
わたしの質問に先輩は、少し首を傾げたあと、口角をあげる。
「ないない! ひーくんが恋愛対象になったことなんて一回もないよ! まあそりゃあ、同じバイト先の仲間だし、多少仲はいいけどね?」
嘘だ、と疑うには、先輩の瞳はあまりに綺麗すぎた。
たぶんこの人、嘘ついてない。
つくつもりもないように見える。
はじめて話したけど、もしかして三滝先輩ってめちゃくちゃいいひとなんじゃ……?