「注文お伺いします」




いつも見慣れてるけど、そんな聖里くんの見慣れない姿にドキッとした。
やっぱり働く側でも無表情、なんだな……。



芙実ちゃんがかわりに注文をしてくれてる間、聖里くんの顔を眺めていたらばちって目が合って、慌てて逸らす。
超不自然じゃない、今の。さすがに見すぎた……?





「ねえ、なんで聖里くんがここに? バイトしてたっけ」





と、芙実ちゃんが代弁。




「いや……現役っていうか、元バイト先。今日人が足りなくて臨時で入ってくれないかって頼まれて……」


「断れなかったわけだ」


「そう」





そういうことね。
だけど、聖里くんは『今日遅くなる』としか言わなかった。
……わたしに、バイトしてるって知られたくなかった、から?




「じゃあ、すぐ用意するから」


「はーい」





元気のいい芙実ちゃんの返事を聞いて、聖里くんは厨房のほうへ歩いていく。
なんだか不思議。聖里くんのこんな姿見れたの、超レアでしょ。




でも、元バイト先ってことは……前までは頻繁に出勤してたってことなんだよね。
当たり前だけどわたしの知らない聖里くんの姿を勝手に想像して、勝手にモヤモヤして。
ほんと、何がしたいのか。