「いらっしゃいまーー」
「え?」
「……え?」
一度目の疑問符はわたしのもの。
二度目の疑問符は……よく見知った、同居人の男の子。
たまたまお客さんとして、っていうわけでもなさそう。
だって、どこからどう見てもウエイトレスの服装だもん。
……なんで?
聖里くん、ここで働いてたの?
でも確かに、アルバイトの話題とかは一切出してこなかったけど……。
「えーっ、榛名くんじゃん!」
「高坂さんと……折田、さん」
あ、そっか。
自分で決めたルールだけど、いつも名前で呼ばれてる分、急に苗字で呼ばれると距離取られたみたいで胸がちくって痛むな。
「とりあえず、あそこの窓際の席使って」
聖里くんにそう言われて、わたしと芙実ちゃんは大人しく席に着いた。
いっぱい詮索したいことあるけど……それは芙実ちゃんも一緒みたいで、そわそわしてる。
「なぎちゃんどれにする?」
「あ、えっと……わたしは、シフォンケーキとミルクココア」
「おっけー、すいませーん!」
芙実ちゃんはもうなにを頼むか決まっていたみたいで、すぐに店員さんを呼んだ。
……店員さんって言っても、ホールには聖里くんしかいないけど。