「……えっ……と」
ち、近い。
ものすごく近いです、聖里くん。
鼻息がかかってる。
聖里くんって……息までいい匂いする。
そんな変態チックなことを考えながら、今の状況をゆっくり把握していく。
部屋、どころかこの家にはいま二人きり。
高校二年の男女。
……ベッドの上。
わたしに対して、聖里くんが馬乗り。
全然、どいてくれない。
どんどん顔が紅潮していくわたしと、無表情のままわたしの顔を見つめている聖里くん。
こわいよ……。わたしの心臓がもたないからはやくどいてっ!
ていうか今どういう感情? 何を思ってこの体勢のままじっとしてるの?
「……ひ、ひじり、くん……?」
「だめ。今名前よばないで」
「えっ……?」
「ほんと……むりだ、俺」
そういいながらわたしの顔の横に頭を落としてくる聖里くん。
むりってなにが!? たぶんわたしのほうがむりなんですけど、これ!
「ちょ、くすぐった……っ」
「……ごめん、すぐどくから」
「う、うん」
……そういいながら本当にどく気あります?
もう仕方がないので、非力ながらに聖里くんの体を押してどかした。