「ごめん、いま大丈夫だった?」


「あ、うん、全然」





申し訳なさそうにする聖里くんの手にはマグカップが握られていて、ここに来た初日のことを思い出す。



壁際の机にコトン、と置かれたのを確認して、わたしは立ち上がる。
そのときに力が抜けてスマホが床に転がった……まではいいんだけど、運悪く画面側が上向きになってしまい、わたしだけじゃなくて聖里くんの視線も画面に集まった。





「なにそれ、家族しゃし……」





あろうことか聖里くんがスマホに手を伸ばしてきたので、彼の言葉を遮るようにバッとスマホを手の中におさめる。




こんな写真、恥ずかしくて見せらんないよ……!
小さい時のわたし、今と雰囲気違うし……。




そんな思いも虚しく、聖里くんの闘争心に火がついてしまったみたいで、なんとかして写真を見ようとしてくる。




「減るもんじゃないんだし見せてよ」


「い、いや、減るよ! きっと、なんか、大事なものが減る! 気がする!」


「どういうこと」





必死に手をぶんぶん振り回すわたしと、それを必死につかもうとする聖里くん。
結果は……。




必死になりすぎて距離感がつかめなくなっていた聖里くんがバランスを崩し。
わたしのことをベッドに押し倒して、終了。