病院で話を聞くと、即死だったらしい。
そりゃそうだ。車酔いがひどいからと窓側に座っていたお母さんのほうが重症だった。



誰が悪かったわけでもない。
運が悪かった、としか言えない。
バスはそんなにスピードが出ていたわけでもなく、それが嘘だったとしても、追求することはしなかった。




今でも忘れられない。
両親がいなくなった日、誰よりも大粒の涙をこぼしていたしいちゃんのこと。



親戚のいないわたしたちにとって、しいちゃんが姉としてわたしを育てていかなきゃならないプレッシャー。
まだ10代に差し掛かったばかりの少女たちには重すぎた。




……だからかも。
こうして、昔から迷惑をかけてきたしいちゃんの元から一瞬離れて暮らせることで、少しだけ気持ちが楽になっているのは。




ちょっと、幼いころのことを考えすぎてしまったな。
ふう、と息をついて脱力した手のひらに乗っているスマホの画面をもう一度見る。




……お母さん、お父さん、わたしはいま上手に笑えているかな。
多くの人に支えられてしっかり生きてるからね、心配しないでね。




ーーコンコン




突然、部屋のドアがノックされて、びくっと肩を震わせる。
び、びっくりしたあ。心臓止まるかと思った……。



わたしが「はーい」と返事をすると、ゆっくり部屋のドアが開かれた。