お風呂からあがったあと、わたしは特に聖里くんと顔を合わせることもなく自分の部屋にもどった。



ベッドの端に腰を掛けてなんとなくスマホのカメラロールをさかのぼっていたら懐かしいものを見つけて、目頭が熱くなる。




いつかの大晦日、大掃除の時に見つけた古い家族写真を『なつかしーっ』と言ってスマホのカメラで撮ったもの。




左上にお父さん、右上にお母さん。
そしてその下にはしいちゃんとわたしが笑顔で映っている。




……もう、会いたくても会えないのにね。
それでも顔を見るだけで当時の会話や様子を鮮明に思い出せて余計につらくなるのは、両親がわたしにとってかけがえのない大切な存在だったから。



それはきっと、しいちゃんもそう。




反抗期なんか来るまえにふたりはいなくなってしまった。
……交通事故だったんだ。



わたしとしいちゃんを家に残して、両親は高速バスで旅行へ向かっていた。
子供にしては大人びていたわたしたちは特に寂しがることもなく、『楽しんできてね』なんて笑って見送った、はずだった。




だけど、その日はあいにくの大雨。
今日みたいな、いや、今日よりもっとひどかった。




それで……ふたりを乗せていたバスは、高速道路でスリップした。
バランスを崩したバスに次々と車がぶつかり、それは近年まれに見る大規模な巻き込み事故となった。