「てか、敬語」
「……いや今のは」
「言い訳しない。んー……ご飯の買い出しは終わったし、罰ゲームどうしようかな」
「まだ続けるの、その制度」
今のはほんとたまたまだって……。
聖里くんは斜め上を見上げながら考え込んでるし、わたしも黙って答えが出るのを待っていた。
しばらくして聖里くんがにっと口角をあげてわたしのほうをみて言い放つ。
「じゃあ、一回敬語使ったら一回キス」
「……へ?」
それ、って。
キスってあのキス?
魚の種類のほうの鱚じゃなくて、口と口を合わせる、あのキス?
わたしが固まっていると、聖里くんは自分の発言の重大さに気づいたのか急に顔を赤くした。
「あっ、いや……待ってごめん今のなし、なしね」
「……うん」
「なに言ってんだ俺、ごめん……浮かれすぎだろ、終わった……」
なんかぼそぼそ言ってる。
こんな聖里くん、やっぱり新鮮でおもしろい。
学校とはまるで違うね。百面相だ。
「終わったって?」
「……絶対引かれたし、嫌われた」
「ふふ」
「なに笑ってる……怖っ」
「そんなんで嫌わないよ」
こんなことで不安になっちゃう聖里くんが、なんかかわいいから。
今の失言は……見逃してあげるね。