「……わたしは、緊張するよ」


「なにが?」





なにが、と言われましても。
この状況も、言葉の一つ一つも、全部拙いから。




「聖里くんとは住む世界違うって思ってたし、こんな風に交わることになるなんて思ってなかった」


「うん」


「だから、緊張する。こうして聖里くんと直接言葉を交わせるのが、夢みたいで」






信じられないくらい、すらすらと言葉が出てきた。
つまりこれが、わたしの素直な気持ちっていうこと。




もう今日だけで見慣れた聖里くんの赤面。
同居初日からこんな感じで、大丈夫なんでしょうか、わたしたち。






「……なにそれ、かわいい」


「かっ……かわいくは、ない」


「俺がかわいいって思ってるからいいの」






そうですか。
そうですよね。



……聖里くんは、わたしをかわいいって、思っている。




信じられない。
本当に? って、何度でも問いたくなる。




でもきっと、嘘偽りないまっすぐな言葉だから、何度聞いたって肯定が帰ってきそうだし、あえて聞かない。





「俺は、これから一か月も毎日なぎさと話せることがうれしいよ」


「……ま、毎日話しますか」


「え、話さない? 一緒に住んでるんだし一日一回くらいは話すでしょ」





確かに。
気が動転しすぎて変なこと聞いた。
ああ、結構真面目に消えたい。