「……ココア?」


「うん、よく寝れるように。よかったら」


「ありがとう、わたしココア好き」





聖里くん、気が利きすぎる。
わたしも何かしら功績を残さないと怒られるやつ?
おかえりなさい、ご飯できてるしお風呂も沸いてるよとかやらなきゃいけないやつ?





「なぎさって甘党?」


「えっ、うん。かなりね」


「食べ物なにがすき?」


「んー……パスタとか、果物だったら桃がすきかな」





会話、一区切りついたけど。
全く出ていく気配のない聖里くんにちら、と目を向ける。



悪びれもなく首を傾げる聖里くんに、出ていかないの? なんて、聞けるわけなかった。




出て行ってほしいのは決して悪い意味なんかじゃなくて。
その、緊張するから。
自分のパーソナルスペースに人が踏み入ってくることなんて滅多にないし、慣れてないの。





「……落ち着かない?」


「えっ」


「俺がいたら、落ち着いて飲めない?」





びっくりした。
聖里くんの洞察力を甘く見てた。


すっかり見透かされてしまって、わたしはなんとなく気まずくて目をそらした。





「そ……そんなことは」


「でも俺、浮かれてるから」


「……それは」


「少しでもなぎさと喋りたいって思ってる」





それは、聖里くんの素直な気持ち?
正直に話してくれるなら、わたしも応えなきゃって、なるじゃん。