結局、お風呂から上がったころには家中にハンバーグのいい匂いが立ち込めていて、慌ててリビングへ戻れば、お皿の並べられた机の前に聖里くんがひとり座っていた。



わたしも手伝おうと思っていたのに、あっさり聖里くんにご飯を用意されてしまって、こんなの久しぶりだったから……困惑した。




聖里くん特製のハンバーグを頬張っておなかいっぱいになったから、せめてもとお皿洗いだけはわたしが終わらせた。




食後すぐに眠くなるわたしの体質も聖里くんに知られてしまったし、「もう寝る」って言い捨てて部屋まで来ちゃったし。
なんかもう、ぎこちないし不自然だ、わたし。



明らかにさっきのしいちゃんの言葉、意識しちゃってる。



『恋とかしちゃうかもね』




なんど頭を振っても消えてくれない。
音楽を流してみてもしいちゃんの声が頭の中で反芻するだけだった。



ああもう……とんでもない爆弾を残してくれたなあ。




ベッドに横になって頭を抱えていると、突然部屋をノックされて飛び起きる。




「なぎさ、入っていい?」


「うん、どうぞ」




ガチャ、と音を立てて入ってきた聖里くんは、手にマグカップを握っていた。
……わ、いい匂い。